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28話-4 決して渡さない。

last update Huling Na-update: 2025-05-28 20:00:32
「では僭越ながら申し上げます」

「魔を討伐し、テントに戻る為山道を歩いておりましたところ、何者かにフェリシアが襲われ、庇った所、暗殺されかけた次第にございます」

エルバートの言葉を聞いたクロヌ皇帝とシトラスはそれぞれ両目を見開く。

「暗殺だと!? それは誠か?」

「はい、ここに証拠がございます」

エルバートが剣先の欠片が中心に突き刺さったブローチを掲げると、クロヌ皇帝に命じられたシトラスが玉座の階段を降り、それを両手に取り、クロヌ皇帝まで運ぶ。

そしてクロヌ皇帝がシトラスに意見を求め、シトラスはクロヌ皇帝に耳元で意見を囁く。

「この剣先の欠片に装飾された高貴な太陽の模様はハロルド・ソレイユのものの証。ハロルド、短剣を今ここで抜き、我に見せよ」

「承知致しました」

ハロルドは了承して立ち上がり、短剣を鞘から抜き、掲げる。

すると短剣の先が刃毀(はこぼ)れしており、フェリシアを含め、クロヌ皇帝とシトラス、ユリシーズが驚く。

(ハロルド様が、ご主人さまを刺した暗殺者!?)

「そん、な、ハロルド様、どうして……?」

フェリシアは震えた声で問う。

「ユリシーズ殿下に頼まれたのだろう? 私を暗殺しろと」

ハロルドが黙秘するとクロヌ皇帝が口を開く。

「ユリシーズ、どういうことだ? 真実を述べよ」

「さすがエルバート軍師長、察しが良いな」

「全ては祓い姫であるフェリシア嬢を私のものにする為、予め、私のペルシャのような猫の式神をフェリシアの元へ放ち探らせ、魔の討伐は表向きとし、裏でエルバート軍師長の暗殺を目論み、昨夜、ハロルドに実行させた」

「ユリシーズ! 貴様、皇帝の顔に泥を塗るとは! この皇国を滅ぼすつもりか!」

シトラスが怒鳴るとユリシーズは笑う。

「滅ぼすなど、とんでもない。フェリシア嬢が私のものになれば、この皇国は安泰となり、世界一栄え、皇帝も神の存在となろう」

「よって、エルバート軍師長、貴方にフェリシア嬢をかけた決闘を申し込む」

フェリシアを含めた全員が驚く。

「そして皇帝には決闘をこの場で承諾して頂きたい」

「何を勝手なことを」

シトラスが言い放つと、クロヌ皇帝はエルバートを見る。

「エルバート軍師長の意思を聞かせよ」

「その決闘、承る」

(承るって……ご主人さま……)

クロヌ皇帝はユリシーズに目線を移し、見
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